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最高裁判所大法廷 昭和22年(れ)60号 判決 1948年6月09日

主文

本件上告を棄却する。

理由

辯護人中野峯夫上告趣意書第一點について。

原判決は被告人が僞造の特配指令書を真正なものの如く裝って大阪府酒類販賣株式會社係員及び麥酒配給統制株式會社關西支社係員を欺き、真正な特配指令書を提出しなければ買受けることのできない日本酒及び麥酒を買受けた事実を認定したものであるから、詐欺罪成立の判示として缺くるところはないものである。論旨は配給制度のあることを確定しなければならないというけれども、配給制度に基いて特配指令書が発行されておることは公知の事実であり、被告人もこれを知っておればこそ指令書を僞造したのであるから、配給制度の現存することを、ことさらに説示する必要はない。又公定代金を支拂ったとしても真正な指令書を持っておるものでなければ買受けることのできないものであるに拘わらず僞造の指令書を真正な指令書と詐り係員を誤信せしめて日本酒と麥酒とを買取ったのであるから、詐欺罪の成立をさまたげるものではない。從って論旨は採用し難い。(その他の判決理由は省略する。)

よって裁判所法第十條第一項並に刑事訴訟法第四百四十六條により主文の如く判決する。

以上は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 塚崎直義 裁判官 長谷川太一郎 裁判官 霜山精一 裁判官 井上登 裁判官 栗山茂 裁判官 真野毅 裁判官 庄野理一 裁判官 小谷勝重 裁判官 島 保 裁判官 齋藤悠輔 裁判官 藤田八郎 裁判官 岩松三郎 裁判官 河村又介)

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